2011年3月4日(金)

 

カイの出発の朝、この先のルートについてさらに熟考した。当初の旅程通り、ドリジー経由で北上しニャンガ、ンデンデを通りガボンに入国(列車にバイクを乗せるか、そのまま陸路で自力か、トラックを探し乗せるか)するか、ポワントノワールまで行き港からオートバイを乗せてくれるフェリーか貨物船を探しガボンの首都リーブルビルにいくことも考えていたが、アンゴラの首都ルアンダで出会ったオーストラリア人ライダーからの情報を思い出した。彼らは北から南下し私が今いるあたりを通過しコンゴ~アンゴラを抜けていった。そのルートと道の状況について「一部険しく、よく転倒した。ただ良い道の状況もあった」と言っていた。ロテテで会ったドイツ人ライダーは、ンデンデ~ニャンガを通った結果、バイクが壊れ走行不能になり大型トラックの荷台にバイクを乗せ「impossible(不可能)」と言っていたが、オーストラリア人ライダー達の通過した道であれば「possoble(可能)」になりそうだ。その道の情報をキバサとマルタンに伝えると、そのルートは大丈夫!という。じゃあそこを通ってガボンの国境まで一緒に行く?と誘ってみたら考えた末、行くと言うのでまた二台3人のツーリングが続くことになった。列車案、港から船案は捨て、やはり自力陸路という選択にした。やはりどこかで当初決めた通り基本はオートバイで全てを回るという方針を貫きたいと気持ちが勝ってしまった。さて吉と出るか、凶と出るか。まず町を出る前に必要なことをしておく。コンゴのお金(FCFA=シーファー)が心もとないなので両替えをしたり国際携帯電話の料金チャージをしたりなんやかんや町を離れたのは9;00近いくなった。

出発してみると本当に道の状態が良い。舗装路に穴、たまにダートがあるだけで走っていて気持ちイイ。この思わぬ出会いのKTM製110ccバイクに乗る二人と一緒なのでとにかく気持ちが楽。道に迷うことがない。私なら絶対こっちじゃないだろという道をチョイスし目的地に最短で向かって行く。ただ彼らのバイクは110ccなのでスピードが出ないのでずーっと40キロ走行だ。それでもまったく苦にならないのは突然の道の穴、いきなりのダートなどになった時にもっとスピードが出ていたら危なかったなという所ばかりだから。ただ彼らのバイクはすでにボワンサを出てから100キロ以上は走っていてそれも二人乗りなのでついにシビティを過ぎたあたりでパンクをした。その修理に3度要す。大分太陽が傾いてきた。私一人だったら近くの村に泊めてもらうのだが彼らはそのままコモノを目指して走り続けるようだ。彼らはすでに地元民ではないにせよ、アフリカ人で悪路の対応方法をよく知っているはずなのでそのまま着いていくことにした。ついに大変な状況になった。雷が遠くから鳴り出した。急いでコモノまで行こうとなったが時既に遅く、大雨が降り出したがすでに途中で雨宿りする村もなくなった。行くしか無い。しかし大雨の路面はつるつるで全車重が300キロを超える私のバイクは「アリ走法」でしか前に進めなくなった。それでも何度か転倒してしまう。18;00を過ぎ、19:00が過ぎ、20:00になり、それでもコモノに着く事して信じてバイクを移動させる。ついに完全に真っ暗になった。もの凄く恐ろしい。ヘッドライトを消すと何も見えない。雷光だけが一瞬、道の状態を照らす。強い雨、泥道、無数の水たまり渡り、それが真っ暗闇の中でバイクを進めなければならない。途中一度後方から車がやって来て乗せてもらえないか頼んでみるが荷台にそのスペースがない車だったで断られた。皆の体力が限界になるがコモノまではまだ距離がある。そして私達以外の車両は全く通行しなくなった。21;00になった時、マルタンから提案が出た。バイクをこの場に停め、道の脇に緊急の小屋(待避所)を作りそこで一夜を明かそうと。それ以外に選択の余地がないのでそうすることにした。ここでマルタン大活躍!アフリカ人凄い!と思った瞬間だった。私はバイクのヘッドライトで照らす以外、手伝うことが出来なかったがジャングルの中で適当な竹を即座に集め、加工し、柱を作って立て、小屋を造っていく。地面の草を抜き、平にして大きな葉っぱを敷きつめる。屋根は何本か支えを通したあと、屋根かわりにまた大きい葉っぱを重ねていく。作っている最中、雷雨の中、蛍が沢山飛んでいるのに驚いた。残念ながらきれいと思う余裕がなかった(笑) 小屋を完成させるとマルタンは満足げにタバコを一服した。そして二人は中に入り寝出した。私も二人の間に入った時マルタンが動いたはずみで小屋がいきなり倒壊した(笑) もう地面に引いた葉っぱがあるだけで天井もなにもない。無情に天から雷雨が降り注ぐ。空は雷で光り続けている。小屋を作り直す体力は誰も残っていない。私は上半身だけカッパを来ているが二人は持っていないためバイクに入れてあったビニールシートをマルタンに。そして私の小さな折りたたみ傘をキバサと一緒に。もう23;00頃だ。寝ようと思うが寝れない。地面から冷たさが伝わって来る。そしてそれが時間が経つについてどんどん体温を奪っていくことを感じる。アフリカ人は大丈夫なのかと思うが凍えているのがわかった。このままでは朝になった時、みんなか誰かは死んでいるのではないかと本気で思った。しかし疲れ果ててもう何もしたくない。とにかくここまま寝たい。願うのは体温が地表の冷たさに勝ってくれることだけだ。ただ、頭に浮かんで来たのはもし私が死んでしまった場合、日本のニュースで流れる報道や悲しむ家族、仲間の顔。そして絶対に無事に帰ると約束したことを思い起こす。やはり出来ることはしようと思い、最後の力を振り絞り、みんなで体を寄せ合って寝ているところ私だけむくっと起き路上中央に停めっぱなしのバイクに行き、荷物をかき出す。地割れ状態の溝にバイクがはまったままスタンドも出せずに停めていたのでバイクが不安定でいつ倒れるか不安の中、そして雨が降りしきる中、バッグを開けるので雨がどんどん入り込む。手探りと小さい懐中電灯を使って着込めるものを探し、雨の中着込み、そしてカッパの下部を履く。私の来ていたライディングジャケットをマルタンに、バッグの中から取り出したウインドブレーカーをキバサに着させ、さらに寝袋を出して広げ、3人に布団のようにかかるようにした。すべてがぐちゃぐちゃで泥まみれになりながらも少々落ち着き、皆の凍える状態が少しは収まった。ただこの日は早朝の朝食以来、何も食べていない。私の手持ちの水もみんなで回し飲みしてきたのでペットボトルに入っている水はもう残りあと半分。手持ちのビスケットを分け合い、地面に寝転んだままそれを口に運び空腹を凌いだ。おかげで少し眠りに入れそうになったが今度は蚊がスゴイ。全身カッパを着込んでいるで大丈夫だと思っていたら首、顔を狙ってくる。私とキバサはヘルメットかぶって寝ていた。ちなみにヘルメットをかぶった状態で寝ると枕が要らず助かった(笑) そのヘルメットの中に何匹もの蚊が入ってきてもうたまらない!出来る限りももう動きたくないのだが、カッパの下に身につけているウエストバッグに虫除けスプレーを入れていたのでもぞもぞと取りだし顔にかけるとその刺激で顔が痛い(苦笑) 少しは効果があったのか知らないうちに眠りについていた。



DSCF3119

カイでのガソリンスタンド。自分でビール瓶にためてあるものを入れます。アンゴラからこの手のものが多くなった。





DSCF3120

カイの町並み







DSCF3124

今日はコモノを目指す!この道の状況が続けば最高!






DSCF3126

コンゴ人の二人。一緒にいて楽しく、信用出来る人達。





DSCF3127

やはりジャングルだけあって周りには見た事がない形の樹々が覆い茂る。







DSCF3128

コンゴの村の家屋。白っぽい色が特徴的。








DSCF3129

ヤバい・・雲行きが怪しくなって来た。








DSCF3132

相当、暗くなってきてしまった。







DSCF3133

彼らに渡した懐中電灯だけがささやかに光る。








DSCF3135

最後の車に助けを求めるが断られる。








DSCF3136

急遽、待避所を造り始めるマルタン。








DSCF3138

小一時間で完成へ。しかしその後は・・。