バンバマを出て、国境までは大変な道のりの総仕上げといった感があるほどだった。水たまりの深い所は腰近くまであるものが連続し何度もスタッグ、数回転倒。その度に二人に助けてもらう。ほとんど誰も歩いていない地域だ。国境手前4キロほどあたりで前からライフル銃を持った人が歩いている。警察や民兵ではなく狩りをする村人だった。その人の住む国境最後の村がすぐそこにありそこで水をごちそうになった。銃で何を撃つんですかと聞くと、このあたりは象が沢山いるのでそれを狙うと言う。いやいやいや、スゴイ・・(笑) また少し先に最後の茶屋?みたいなものがあり最後の休憩をしている時に、子供インタビューに挑戦した。コンゴ共和国に入り二日目、大雨で急遽泊めてもらったキンブングの村で子供インタビューに失敗しているのでコンゴでのラストチャンスだ。キバサに主旨を伝えて12才の子供にインタビューを開始するがキバサも私も英語力が高くないため質問内容も把握できにくく子供に通訳をしにくいようだ。ここでもいろいろな角度から質問内容をキバサに伝えるが結局、出来なかった。一番ショックだったのは「夢」=フランス語でreveの意味が判らないという。「夢を持つ」という概念がないように思えた。キンブングの村でも同じような反応だった。確かにコンゴの山奥に住み、夢を持つという事は難しいのかもしれない。私は今日中にフランスヴィルに行き、彼らは家に帰るために来た道を戻っていかないとならないため子供インタビューを終えるとすぐに出発した。
どんどん、どんどん、道が悪くなりとてもキツい下り坂のあと突然大きな川があり道が開けた。そこにかかる橋は立派だった。ついに国境に着いたのだ。橋を渡ると「GABON」と書いた石像だけがある。今までの国境と全くイメージが違う。そしてその川を境に道が格段に良くなっている。ここは本当に境界線だ。彼らが言うにはここから4キロ走るとガボン入国のイミグレーションがあるという。そこまで一緒に行こうと言うと、自分たちはこのパスポートも何も持っていないのでこの境界線から先のガボンのエリアに立ち入ることができないと。4度の夜を共にした仲間と本当に最後の別れの時が来た。彼らと約束した御礼に上乗せしたものを渡し、記念撮影をし、橋の上で最後のハグを、強く、そして長くして涙の別れをした。橋の下ではごうごうと茶色い濁流が流れている。二人は私が見えなくなるまで橋のたもとで見送るという。バイクにまたがりエンジンをスタートさせギアを1速にいれ発進させる。一度だけ振り向きお互い手を振る。その後、私は高い茂みの道の奥に入りこみ彼らと永遠の別れになった。 彼らと別れて走り出した時、トリップメーターをリセットして4キロ走ったが国境らしきものが無い。5日ぶりに一人ぼっちに戻ったため相当不安になる。また道が悪くなった。話しが違うじゃん!(苦笑)と思うが、もうアフリカ人の言う表現と私の感覚が相当違うことには慣れた。結局、10キロ過ぎた所に国境オフィス(村の端に設営された大きめのテント)の一部があった。道もすぐに良くなってきた。相当な疲れの中、フランス語が出来ずに一生懸命ジェスチャーで話しをしパスポートなどを差し出してから水が欲しいと表現すると美味しい缶ジュースと大きい新品の水のペットボトルをただでくれた。おいおいおい!ガボンに入ったとたん今までの雰囲気とは違うぞ!(嬉)その方々の顔付きもかなり優しい。その場所は荷物チェックの場所で、パスポートに入国のスタンプを押すのはここから3キロ先のジェンダメリー(憲兵オフィス)に行って下さいというので進むとやはり5キロ先だった(笑) そこに着き30分以上待った結果、スタンプを押す係官がフランスヴィルにいてここに居ないのでフランスヴィルの警察署まで行って欲しいという。入国関係の作業はポリス(警察)とジェンダメリー(憲兵)とで分担して行っているらしい。その時点で15:00を過ぎていたのでフランスヴィルに向かうのは明日にして今日はこの町に泊まろうかと思っていると伝えると1時間30分あればフランスヴィルに着くよと。道は全然良いので大丈夫だという。信じて走り始めると本当に道はよく結局フランスヴィルの警察署に17:00に着いた。警察署に着くと明日の朝来て下さいとのことだったのでその警察官に教えてもらったホテルに向かい到着。そのホテルは町で一番良いホテルでプールはある、シャワーのお湯も十分出る、部屋はきれい、食事も美味しい、価格も手頃、と全てが揃っていて感動するほど嬉しい。アンゴラ北部~DRC~コンゴのきつい区間がまるで夢だったと思うほどの世界に来た気がした。残念ながらインターネットが壊れているので各方面への連絡はまだ当面お預けだ。
【ホテルプバラ 一泊4000円素泊まり】
泥だらけの荷物を部屋で解き、すぐにシャワーを浴びた。「(俺)生きている!!」思わず言葉が出た。お湯のシャワーをこんなに幸せに感じたことはなかったな。そして泥が付いてない衣類を探し着替えてホテルのレストランで夕食を摂った。全部フランス語で読めなくて困っていると別のテーブルで食事をしている人が手伝ってくれた。基本のコース料理があったのでそれを頼む。サラダ、チキンのメインディッシュ、デザート、そしてファンタ、水、最後にコーヒー。これら全てを一口、一口、感嘆の思いで味わった。
ホテルに着いてから何度か、マルタンとキバサに電話をしているが通じない。今どこを走っているんだろう。少し心配。彼らは家に着くまで4日はかかるだろうと言っていた。
虫除けスプレーを使っているが何かに刺されこのとおり(苦笑)
大自然の厳しさと、コンゴの道の悪さが相まった結果の道。
これは竹が集まって生えているものだった。
マルタンの指示が的確なので助かる。
ジンジャー(ショウガ)の仲間だと思うが独特の甘みがあってこれを拾いながら食べて進んだ
最後の村で象狩りの人と。
手作りの子供のおもちゃが可愛かった。
ガボンとの国境はこれだけ。
感慨深い表情の二人。使命を全うした満足感と別れの辛さと4日以上かけて帰る憂鬱さ?
最高のショット!
見送りを背に前に進むしかない。
10キロ先にガボンの入国審査場があった。みな親切にしてくれた。